文系出身ながら実務を通して学び、アクセンチュアへ転職した田中さんのキャリア観とは?
この先も大きく伸びそうと選んだデータ分析の道。実務で腕をひたすら磨き、キャリアアップをしてきた田中さんはなぜその道を選び、どんなことを考えているのか?詳しく聞いてきたのでご紹介します。
田中 匠
早稲田大学 商学部 卒業
Accenture Digital /Digital Business /Applied Intelligence
データ分析が伸びそうだったので新卒で社員5名の会社へ入社
これまでの経歴を教えていただけますか?
私は、これまでインタビューされた方たちと違い、出身は私立の文系で、早稲田大学の商学部でした。
大学4年生のころにデータ分析の会社でインターンをしていて、その会社が面白そうだったので、当時は社員数が5名くらいしかいませんでしたが入社しました。
当時は、この先も大きく伸びそうな分野が何かを探していたところ、データ分析の分野は伸びそうでしたし、面白かったのでそのまま入社を決めました。
業務としては、主に大規模なポイントカードの分析やプロモーションの効果検証をしていました。
その会社では合計2年ほどインターン含めて働き、とあるデータ分析の会社さんより声をかけてもらい一昨年の3月ごろに転職しました。そこではいろいろな経験をつみました。
一例をあげると、レコメンドや自然言語処理や強化学習など幅広く経験させてもらいました。
転職したデータ分析をメインにする会社では、新しい概念や理論、原理などが実現可能であることを示すための簡易な試行であるPOCを多く担当しました。
POCでは、「新しい技術があるらしいのでやってみて」という感じで依頼されることが多く、それ自体は新しい技術に触れられるので楽しいんですが、POCのみで終えることも少なくありませんした。
例えば3か月でこれをやってというお題があって、それをやったらお終いという感じでした。
実際にその後お客さんがどうなったかがわかりませんでした。
ですから、実際に最後どうなったのかまでわかるような事業会社やコンサルティングの会社を探し始めました。
そんな状況の中、去年の8月に縁あって現職のアクセンチュアに入社しました。
人工知能との最初の接触点はインターンの時ですか?
学生時代に、研究室で株価を予測することをやっていましたので、分析自体はそこで触れていました。
ただし、SPSSを使っていたので、そこまで深くやっていたというわけではありません。
インターン時代には、自分がAIやビックデータ分析をメインでやっているイメージがあまりついていませんでした。
そもそも得意かといわれるとそこまででしたし、数学も得意と呼べるほどのものではなかったので。
一人称で一通りできるようになったのは、前職で文字通り寝る暇もなく思いっきり働いたからです。
当時は週2回家に帰るような生活でした。
インターン時代は運用がメインだったので、SQLの割合が多く、たまにRやPythonをする程度でした。
したがって、前職ではほぼ未経験からのスタートで、過酷なまでに働いていました。
例えばPOCとなった際には、Pythonメインで比較的多くコーディングする必要がありました。
そういう意味で、当初のスキルに差があり、その差を埋めるために必死で働いていた感じです。
振り返ってみると、朝4時までやって会社のソファーで寝て、8時にお客さんのところへ行くという生活をしていました。
未経験からある程度できるまでどのくらいかかりましたか?
2016年3月に未経験で入社し、ある程度一人でできるようになったのは1年経ったくらいでしょうか。
一番はじめに担当したお客さんが、前職の会社へ転職してきたのですが、1年ですごく変わったと言われたのを覚えています。
ただし、今は体力的に難しいと思いますし、現職ではだいたい19時~20時には帰っていますので、今やれと言われたらできませんが。
現在は自然言語処理をメインに担当。これまでと違い深い知識が得られている
現在はどんなことをされていますか?
あまり詳しくお話しできないのですが、現在は大きく自然言語処理の分野のことをしています。
範囲は広く、自然言語に必要なほぼすべての工程をやっています。
データ取得部分やデータがそもそもあるのか、どういう分析手法を使うか、5名程度の人数でやっていますが、タスクの洗い出しなどもやっています。
それ以外にもPythonでコードを書くこともしています。
ただ、深層学習の技術をメインで使っているかというとそこまででなく、テキストマイニングを主として使っています。
使っている新しめの技術としては、せいぜいWord2Vecくらいです。
現在の業務をしていて良いところは、これまでと比べると案件に携わる期間が長いので、お客様と同じくらい業界固有の業務知識に詳しくなれることです。
例えば、分析していてムラがでた場合に、こういう行動をとるのは、このタイミングでこういうサービスの影響があるなど要因が具体的にわかるようになりました。
そういう意味では案件への関わり方や思い入れもこれまで以上に強くなっていると実感しています。
プレゼンする相手についても現在の環境はこれまでと異なり、
例えば前職だと課長級クラスの方へプレゼンしていたのですが、今は日本を代表するような大企業の社長や副社長へ直接プレゼンしています。
それができるのは、運の要素もありますが、データを見ていると説得力があるからだと思っています。
そこは、現職へ転職して良かったことですね。
今後は施策にいかせる筋の良い分析をし、ビジネスにつなげることを目指す
今後はどこを目指していきますか?
今後個人として目指していくのは、バリバリのエンジニアはすごい方たちが多くいて、それこそ転職のきっかけとなった方もそうなんですが、その人と同じような道を目指しても絶対勝てないなと思っています。
だから、バリバリのエンジニアよりもビジネスにつなげるところならもう少し上の方まで行ける気がしています。
正直そういう思いもあって、今の会社へ入社しましたので。
ビジネスにつなげることについてもう少し詳しくお聞かせいただけますか?
例えば、優秀なエンジニアの方でも、お客様に『こういうことができないの?』と聞かれた際、正論で正面から返してしまうことが少なくないと感じます。
理路整然としているのですが、「こういう理由だからできません」とはっきりと言ってしまうことがありました。
そういう状況の時こそ、どうやったらできるかというように返してあげられればもっと発展していくのにと感じています。
いろいろ見ていると、優秀なエンジニアの方でもそのように話がまったく広がらないようにもっていくケースがあったので、もう少しやりようがあるのではと思います。
このように、コミュニケーションをさらに工夫することで、ビジネスの活路を見いだせる気がしています。
また、筋の良い分析ができることもこの先重要だと考えています。
筋の良い分析とは、こういうことがわかればこういう施策ができるということを検証する分析ができることです。
分析をしても施策にいかせなければあまり意味はないので、業務知識をいかに持っているかにもよって違いますが、そこは重要だと感じています。
これまでですと、分析が主軸になっていて、あまり意識が及んでいませんでしたが、今は施策に結びつくかという視点で分析をするよう心掛けています。
そういう観点をもってからは、はじめに課題についてもこれまで以上に丁寧に聞いていき、どういうことがわかったら嬉しいかも漏れなく聞き、仮説をもったうえで分析をしています。
ビジネスにつなげられる人は市場価値が高い
市場価値が高い人材とはどんな人だと思いますか?
会社によって違うとは思いますが、リサーチャーのような論文を読んで、読んだことをそのまま実装できる人は市場価値が高いと思いますが、それはほんの一握りの方です。
それ以外の人ですと、ビジネスにつなげられる方は市場価値が高いと思いますね。
ただし、現時点という意味ですと、Pythonが難なく書けて、普通に分析ができれば結構引く手あまたな気はしています。
それこそ転職はいくらでもできると思います。
といっても、どこにでも行けると言うと言い過ぎかもしれませんので、分析が進んでいて高いレベルのところ以外ならいけるのではと思います。
田中さんがおっしゃる分析できるとはどのレベル感でしょうか?
例えば、scikit-learnが使え、DeepLearningのフレームワークが何か使えて、かつ画像や自然言語でも何か一つ知識としてある程度理解していて、実装までできれば尚よいと思います。
あとは、実務をやっていないとわからないと思うのですが、前処理が大事だと思います。
その前処理とは、SQLも大事ですが、本当に大事なのはデータの構造を理解するための知識です。
例えば、ECの購買分析をした際、よく買っているhighのお客様と全然買わないlowのお客様はまず除いたほうがよいというような感じです。
なぜ除くかというと、買う、買わないがはっきりとわかっている状況だと、それらがノイズになってしまい、分析しても無駄だったりするからです。
明確になっていないmiddleこそ分析する価値があるので、そこを分析した方がよいというような感じです。
1年である程度できるようになったようでしたが、どのように勉強されましたか?
自分は本をあまり読まないタイプなので、案件で必要になったら、webで探すような感じでした。
今思い返すと、すごい人と一緒に仕事をするのが一番だと思いますね。
すごい人にたたかれ、おまえのコードはダメだと言われながらも、何とかこなしていくのが一番だと思います。
机上で学ぶよりは、一回どこかで経験をつんでしまえば、やったことがありますと言えて、またどこかへ転職もできると思いますので。
ライブラリが使えるだけでなく、専門領域があると付加価値が高くなる
今後付加価値を高めるために重要なことは何だと思いますか?
今後は、先ほどお話ししたようなPythonが書けて、scikit-learnが書けてというスキルは陳腐化すると思っていますし、そういう部分はより簡単になっていくと思います。
だから分析だけでなく、さらに一つ自分が得意とする専門領域をもっていれば強くなると思います。
自分の周りを見渡してみても、ビジネスは詳しいけどサイエンスはあまり詳しくないという方が圧倒的に多く、両方できる人は滅多にいないと実感しています。
最近はカプセルネットワークに注目している
最近注目している技術はありますか?
少しだけ古いですが、カプセルネットワークとかですかね。
カプセルネットワークはこれまでの集大成のようなものだと感じたので、一回しっかり勉強したいと思いました。
カプセルネットワークはデータ量が少なくても精度がでるというのがあり、面白そうで注目していますし、これからさらに研究も盛んになるのではと思っています。
人工知能はさらに発展するので、柔軟に自分のキャリアを見つめることが大事
人工知能の未来は今後どのようになっていくと思いますか?
例えばシンギュラリティの話題がよくでていて、人間の仕事の大半を奪うといわれていますが、個人的にはあまり心配していません。
人しかできないようなことはこれまで以上に重要になるのは間違いないので、ずっとなくならない仕事も巷で言われるようにあると思っています。
また、人工知能やIoTなどの技術が進歩していくにつれて、今まで世の中になかった新しい仕事が生まれてくることでしょう。
今までの仕事の進め方や技術に固執することなく、業界や技術の趨勢により敏感になって、柔軟に自分のスキルやキャリアを見つめることが大事だと思います。